『12人の怒れる男(原題:Twelve Angry Men)』
監督:シドニー・メルット
主演:ヘンリー・フォンダ
公開:1957年
100分間ずっと魅了されっぱなしだった。
この作品を今まで知らなかったなんて、何て勿体ないことをしたと一瞬後悔したけど、生きている間にこの作品を観ることができて良かったという気持ちになった。
本作は60年前以上に創られた作品だ。したがって劇中の人物たちの思考や言動から当事の人たちの行動規範や倫理観が覗える。
「個人的な偏見を排除するのはいつも難しい。しかも偏見は真実を曇らせる」
少年が本当に父親を刺殺したのかどうかという真実は、映画の中では明らかにされない。
実際に陪審員8番も「彼は有罪かもしれない」と言っている。
陪審員8番が憂うのは、少年がスラム出身で、「彼が有罪である」という偏見がまかり通ってしまうことだ。
対して、「いいか、ここじゃすべてがねじ曲げられている」と陪審員3番は叫ぶ。
自身の息子との確執から少年を有罪にしようとする彼の行動は、それ自体が「個人的な偏見」であり、「ねじ曲げられている」。
民主主義とは、多数の意見に従うことではない。少数の意見に耳を傾けることだ。
ところが、作品から60年後の現在はどうであろうか?世界は依然として差別と偏見に満ち溢れて、レイシズムが横行している。
21世紀に生きる私たちは、先人達の叡知を受継いているはずなのに……