にしむーのちゃらんぽらん日記

趣味の登山や寺社仏閣、映画のことなんかを備忘録的に記録しています。

映画感想「The Deer Hunter」

先輩からDVDを借りて観た本作。

初見は題名の意味を、二度目は主人公たちのルーツを、三度目はLGBTという視点で観ると、この作品を完全に堪能できると思う。

 

主人公マイク(ロバートデニーロ)は鉄工所で働く若者で、鹿狩りが趣味の男だ。
そんな彼もベトナム戦争の捕虜経験で自分の命がゲームの対象に使われてしまうという恐怖を味わい、戦場から帰ってきても以前のように鹿を撃てなくなってしまう。
鹿狩りを通して、命のやり取りを遊びでやっていた普通の人間が、戦争で心身共に傷を負い、命を奪うことの恐ろしさを知る。そんな物語だからこそ『the deer hunter』と名付けられたのだ。

 

序盤のスティーブンの結婚式シーンでは、宴の席でのコサックダンスやロシア民謡などロシアを連想させる要素はたくさん出てくる。出征しない友人も「ヒザさえ悪くなければ」と戦争に行きたがっていることを示すセリフがある。
中盤では、ベトナムの病院でニックが医師にロシア系かと問われ必死に「アメリカ人」と即答する場面がある。
彼らはロシアにルーツをもつアメリカ人だ。ロシア系ということに引け目があって愛国心を示すために強烈に「アメリカ人」であることを拘ったのではなかろうか。
そう考えると、劇中で彼らを最も苦しめるのが文字通りロシアで生まれたロシアンルーレットというのは物凄い皮肉である。

 

更には同性愛についての描写である。マイクは、鹿狩りには必ずニックを連れて行き、一緒に生活もしている。スティーブンの結婚式後のダンスシーンで、マイクはニックを見つめる。リンダに「ニックが好きか」と聞くのも意味深だ。マイクがリンダに迫られても彼女と肉体関係にならなかったことも、マイクがニックを愛していたことの現われだろう。
終盤でニックが生存していることを確信したマイクはベトナムに行き、ロシアンルーレットで死と隣り合わせの彼を説得しようとする。このシーンでははっきりと「愛してる」というセリフもあり、マイクのニックへの思いがわかる。