にしむーのちゃらんぽらん日記

趣味の登山や寺社仏閣、映画のことなんかを備忘録的に記録しています。

【映画感想】裏窓

真夏にクーラーがなければ窓を全開にしなければ暑さはしのげないし、現代と異なりプライバシーに ルーズな時代だったのだろう。昔の作品を観るときは、当時の常識がどうなのかを思い巡らしながら 観るのがベターだ。

主人公ジェフ(ジェームズ・スチュアート)の観察(覗き)の仕方が、時間の経過と共に肉眼→双眼鏡→ カメラの望遠レンズと変わっていくけど、カメラワークはジェフの部屋から出ることはほとんどない。 物語はジェフの部屋から見える範囲でしか進んでいかないのだ。

ジェフは、報道カメラマンで仕事中の事故で左足を骨折しギブスで固定されて自由を奪われ、自宅2階 アパートで暇を持て余している。 起きている間ずっと、窓から裏庭や向いのアパートを覗いている。子犬をかっている夫婦、ダンサーのお姉さん、音楽家の人、新婚夫婦、ミセスロンリー、そして宝石商とその夫人を覗いている。

看護婦兼家政婦のステラや恋人のリザにその行為をたしなめられながらもジェフは続けるのだった。 ステラの「サンドイッチには常識をはさめ」やリザの「もう此処には来ないわ。少なくとも明日の晩までは」なんていう セリフは日本人が言うとダサいが欧米人が言うとマッチするのは何故だろう(笑)。

雨の晩、例によって窓から外を眺めるジェフ。宝石商の男が大きなトランクを抱えて 2度出入りする姿を目撃し訝しがる。しかし、ジェフはここで寝てしまい、宝石商の男が女と一緒に3度目の出入りする 姿を見逃すのだ。さらには、翌日子犬が殺されたシーンもジェフは見逃してしまう。(もっともヒッチコック監督は、子犬殺害の現場は視聴者にも見せてないが。)決定的証拠を逸してしまうジェフである。

ステラもリザは最初のうちはジェフの言うことを信じていなかったけど、信じてからの言動がノリノリで見ているこっちが 冷や冷やしてしまう。リザが宝石商の部屋に忍び込んだシーンは本当にハラハラする。このシーンと、ミセスロンリー ハートの自殺未遂(服毒寸前に音楽家の演奏によって思いとどまる)を同時進行させる筋書は圧巻だった。 宝石商に自身の存在を知られたジェフは、一人で自宅にいるところを宝石商に襲われる。ジェフは対抗手段に、カメラのフラッシュをたいて目くらませをする。この映像がオレンジ色のなんともいえない余韻を残す。しかし、これは時間稼ぎにしかならず、宝石商はジェフを窓から落とそうとする。ここは2階なので落としても死にはしないと思うが……。このドタバタの最中、刑事たちが気付いて宝石商を取り押さえるもジェフは裏庭へ転落。この転落シーンはスローになってて面白かった。

結局、宝石商の妻殺しの真相ははっきりと描かなかったのがモヤモヤするけど、これはこれで良い。 映画の最後は、両足を骨折したジェフが自宅の車いすに腰かけて眠っている側で、リザがヒマラヤ系の風景グラビアを読んでいる。でも、途中でファッション系雑誌に変えたんじゃなかったかな?これは、この二人の結婚は上手くいかないという暗示かな。